佃流し

意地を命の深川育ち
浮名二人を筏にのせて
初手は気まぐれ　いつしか
まことあかす　佃の流し節

浮世さらさら　さらりと捨てて
ままよ明日は　あの潮まかせ
愚痴と笑うが　未練と言おが
忘れられない　身はひとつ

雪のだるま

　二上り

雪のだるまに　炭団（たどん）の目鼻
とけて流るる　墨衣

行きに寄ろうか　帰りにしよか
ならば行きにも帰りにも

水の出花

　本調子

水の出花と二人が仲は
せかれ会われぬ身の因果
たとえどなたの意見でも
思い切る気は　さらにない

夕立

三下り

夕立のあまりの強さに　ちょっと雨宿り
傘を借りよか　このままゆこか
ままよ　このまま濡れてゆく

あきらめてみても未練で　また思い出す
なまじなまなか　無い縁ならば
見せておくれな　面影を

里をはなれし

本調子

里をはなれし　草の家に
二人がほかは　虫の声
すきもる風に　有明の
消えて嬉しき　窓の月

長兵衛

　二上り

阿波座烏は難波潟
藪鶯は　京育ち
吉原雀を羽がいにつけ
江戸で男と立てられた
男の中の男一匹
いつでも訪ねて　御ぜえやし
影膳据えて　待って居りやす

雨やどり

　六下り

夕立ちに　ひとり外見る　洗い髪
待つ人は来もせで　濡るる門口に
辛気な声や　雨やどり

腕守り

　三下り

川風の渡る涼しき柳橋
褄とる手先　ほろ酔いに
紅をさしたる爪先の
踏む桟橋や　屋根舟に
ひらりと移る　仇姿
透綾（すきや）の肌に風薫る
男嫌いの評判も　
つい堅川（たてかわ）か一の橋
弁天様へ願掛けの
二の腕かけた腕守り

博多どんたく

　二上り

しゃもじ囃子のどんたく祭り
花笠　編笠　片肌脱いで
派手な縮緬　あだめく蹴出（けだし）
浮世の垢をにわかで落とし
一度は気休め　二度は嘘
三度のよもやにひかされて
粋も無粋も　歌えや踊れ
浮かれ博多は　よい知らず

恋の鳥

　三下り

祭囃子の音絶えて
帰りそびれた恋の鳥
はばたく闇に　せせらぎの
かじか鳴く　夏の夜の夢